あなたはどっち?個人再生には2種類の手続きがあった!

個人でできる民事再生、債務整理の個人再生には2種類の手続きがあるって知っていましたか?

任意整理や特定調停、それに自己破産などは基本的に手続きの種類が違う、といったことはないのでピンとこない人もいるでしょう。

ただ、小規模個人再生と給与所得者等再生について知っていれば、あなたがどちらに向いているのか自分で調べられるようになります。

ざっくりとでいいので、2つの違いを確認してみましょう。

とにかく安定した収入があれば利用できる「小規模個人再生」

小規模個人再生とは、「安定した収入があればだれでも利用できる個人再生手続き」です。

もう一方の制度が「給与所得者等再生」なので、お給料をもらうことのない個人事業主を対象にしていますが、実際にはサラリーマン、派遣労働者、フリーター、公務員でも収入さえ安定していれば利用できます。

お給料をもらっている人だけが利用できる「給与所得者等再生」

小規模個人再生が求める条件をクリアしたうえで、「安定したお給料をもらっている人」だけが利用できるのが、給与所得者等再生の手続きです。

いわゆるサラリーマンが対象で、個人事業主などは利用できません。

小規模個人再生と、給与所得者等再生の違いをくらべてみよう!

基本的な違いを抑えたら、今度は種類の手続きの具体的な違いをくらべてみましょう。

ポイントは、「申し立て資格の違い」「弁済額の違い」「債権者の同意の有無」の3点です。

申し立てに必要な資格が違う!

小規模個人再生を裁判所に申し立てるためには、

  • 借金がどうやっても返せない
  • 住宅ローンをのぞいた借金額が5000万円以下
  • 毎月安定した収入がある(過去2年ぶんの収入が安定していれば大丈夫)

という「資格」を満たしていなければなりません。

給与所得者等再生では、小規模個人再生の条件にくわえて、

  • 毎月のお給料の金額も一定していること(年間で20%以上の変動があるとダメ)

も必要になります。

通常サラリーマンはお給料の額がいきなり増えたりへったりすることはないので、「給料の金額が一定している」ことも条件になっているわけですね。

収入の額が安定していると、返済計画もたてやすいです。

手続き後に支払っていく弁済額が違う!

個人再生では、3年から5年かけて債権者に一定のお金を支払う(弁済)ことでのこりの借金を勘免除してもらうことができます。

この弁済額がいくらになるのか、という基準にも違いがあります。

小規模個人再生の場合は、

  • 民事再生法で定められた最低弁済額
  • あなたが自己破産したときに債権者が回収できる、差し押さえ品の売上金額(清算価値)

のどちらか多いほうです。

個人再生では債権者が一方的に損しないように、「最低でも清算価値以上は債権者に支払うように」と決めた「清算価値保証の原則」をまもったうえで弁済額を決定する必要があります。

給与所得者等再生の場合は、「清算価値保証の原則」をまもったうえで、

  • 民事再生法で定められた最低弁済額
  • 可処分所得の2年ぶん

のどちらか多いほうが弁済額です。

可処分所得というのは、「手取りから生活費を抜いた、自由に使えるお金」のこと。

実家暮らしで家賃が不要だったり、独身で家族を養うための生活費がいらなかったりすると可処分所得が増えてしまうので、給与所得者等再生の弁済額は小規模個人再生をした場合より高くなることが多いです。

再生計画に債権者の合意が必要かどうか、が違う!

個人再生では、「再生計画」を裁判所に提出して決議してもらいます。

再生計画が認可されれば債務整理は成功ですし、不認可になったらそこでおしまいです。

小規模個人再生では、再生計画の認可に、

  • 債権者の意見を聞いて決議する
  • 債権者の反対が半分以下である
  • 反対した債権者からの借金が、あなたの借金総額の半分以下

という条件があります。

債権者がいやだといったら、個人再生できないわけですね。

給与所得者等再生の場合は話がべつで、再生計画の認可に債権者からの合意は必要ありません。

意見聴取こそありますが、裁判所の決定だけで再生計画の認可がおりるので、再生計画の認可だけを考えると給与所得者等再生のほうが簡単なのです。

「小規模個人再生」のほうがお得!?

じつは、個人再生をする人の90%以上が「小規模個人再生」を選んでいます。

裁判所が公表している「司法統計」のデータを見ても、平成22年から26年までの5年間、小規模個人再生の利用率が90%以上を下回ることはありません。

(興味のある人は、「司法統計」で検索→1民事・行政→事件の種類と新受件数の推移をチェック!)

小規模個人再生の利用者が多いのは、給与所得者等再生だと弁済額が高くなりやすく、すこし条件が厳しいため、つまりは小規模個人再生のほうがお得なことが多いからです。

ただ、なかには給与所得者等再生をしたほうがいい人もいます。

さあ、あなたには小規模個人再生と給与所得者等再生、どちらの手続きのほうがお得でしょうか。

個人再生をするときは、手続きの違いも考えてみてくださいね。