「最低○○円は払いましょう!」個人再生における最低弁済基準額とは
債務整理のなかで、「債権者に1円も支払うことなく借金を整理できる」のが自己破産です。
債権者と話しあって利息の引きなおし計算を行い、「過払い金のぶん借金をへらして、各種利息をカットして元金だけ返す」のが任意整理。
債権者と話しあうときに裁判所の力を借りて、「利息の引きなおし計算によってわかった、正確な借金額と利息を返す」のが特定調停。
そして裁判所にかけあって、「借金の一部、一定額を支払うかわりに、のこりの借金を免除してもらう」のが個人再生です。
債務整理において、自己破産以外のやり方ではかならず「いくらかのお金を支払う」必要があります。
任意整理と特定調停なら、「利息の引きなおし計算をしてわかった本来の元金」が基準ですよね。
ただ、個人再生だけは「一定額ってつまりいくらなのか」がわかりづらいと思いませんか?
個人再生をすると借金が5ぶんの1になる、ときには10ぶんの1になるなんて良くいいますが、どうして借金がそんなにたくさんへるのでしょうか。
個人再生をすると弁済することになる「一定額」とはなにものなのか。
その答えが、今回説明する「最低弁済基準額」なのです。
民事再生法で定めた「最低弁済基準額」
個人再生は、「民事再生法」を根拠にした「民事再生手続きの簡易版」としてつくられた制度です。
金額的な上限をかけて手続きを簡単にすることで、倒産しそうな企業が利用するような大きな手続きを、個人でもできるようにしているわけですね。
なので、個人再生の手続きや利用法、利用条件なども基本的に「民事再生法」に従います。
個人再生の手続きは、「借金のうち○○円払えば、のこりの借金は勘弁してあげるよ」という許可を裁判所からもらうための手続きです。
この○○円の部分を具体的に示しているのが、「民事再生法の第232条の第2項」です。
具体的といってもかなり難しい文章なので、あとで表にまとめたものを紹介します。興味のある人だけ原文をしらべてみましょう。
どうやって金額を決定するの?最低弁済基準額の調べ方を確認しよう
最低弁済額の基準は、民事再生法で決められているものなので動かしようがありません。
個人再生は裁判所を利用するきちんとした手続きなので、任意整理のように「支払額はだいたいこれくらいでどうですか?」「おお、それならオッケーです!」といったふうにてきとうに弁済額を決めるわけにはいかないのです。
借金額が100万円以下の場合は全額支払いましょうね、といった分類がつくられているわけですが、当然「どうやって具体的な弁済額を求めるのか」というルールもつくられています。
裁判所の調査でわかった、正確なあなたの借金額を基準に使う!
小規模個人再生手続きのなかで、正確な借金額を調査するのは裁判所です。
書類を取り寄せたりあなたや債権者に質問をしたりして、法律にのっとった正確なあなたの借金残額を計算してから、「じゃあこの借金をどうしましょうか」を考えます。
なので、「あなたが支払う弁済額は、裁判所が調査した正確なあなたの借金総額」を「民事再生法の最低弁済基準額に照らしあわせて」求めるのです。
具体例で見てみよう!借金をしている田中さんのケース
ためしに、「小規模個人再生をする田中さんは、最低弁済基準額でいくら支払わなければならないのか」を考えてみましょう。
自営業で借金の返済に困った田中さんは、裁判所で小規模個人再生手続きを行いました。
裁判所が調べたところ、田中さんの借金額は、
- サラ金から100万円
- 銀行から自動車ローンとして200万円
- 消費者金融A社から50万円
- 消費者金融B社から50万円のキャッシング
- 大学進学のために借りていた奨学金ののこり、158万円
でした。
総額を計算してみると、「558万円」の借金があるということですね。
「最低弁済基準額」の表を見てみると、500万円以上1500万円未満の借金の場合、「残債の5ぶんの1」でいい、となっています。
つまり田中さんは、総額111万6000円弁済すればいいわけです。
もうすこしくわしくいうと、田中さんはそれぞれの債権者に対して、
- 借金の18%をしめるサラ金には、「20万880円」(111万6000円×18%)
- 借金の36%をしめる銀行には、「40万1760円」
- 借金の9%をしめる消費者金融A社には、「10万440円」
- 借金の9%をしめる消費者金融B社には、「10万440円」
- 借金の28%をしめる奨学金は、「31万2480円」
弁済するのです。
小規模個人再生手続きにおける最低限の弁済額というのは、こういったながれで計算されています。
難しそうに見えるかもしれませんが、計算そのものは簡単なので、一度電卓を叩いてみましょう。