給与所得者等再生を利用するために必要な条件5つ

個人再生手続きよりちょっと条件が厳しくて、そのかわりに「再生計画の認可に債権者の同意を必要としない」というメリットをもつ給与所得者等再生を利用するためには、いくつかの条件をクリアしていなければなりません。

条件面がいろいろと面倒なこと、そして意外と弁済額が高額になりやすいことからあまり人気のない手続きではありますが、給与所得者等再生を頼ったほうがいい場面もあるのです。

例えば「小規模個人再生で債権者から反対されたあと、再度申し立てをする」場合。

債権者の賛成を必要としない給与所得者等再生をすることで、あっさり個人再生手続きに成功する、なんてことも。

いざというときに利用するためには、制度についてよく知っておく必要があります。

今回は給与所得者等再生を利用するために必要な5つの条件を、いっしょに確認していきましょう。

条件その①住宅ローンをのぞく借金の総額が5000万円以下

給与所得者等再生の利用条件は、一部をのぞいて「小規模個人再生」とおなじです。

小規模個人再生の条件については「小規模個人再生手続きの条件」で紹介していますが、念のためにここでも簡単に確認しておきましょう。

ひとつめの条件は、「住宅ローン以外の借金総額が5000万円以下」であることです。

個人再生は民事再生をより使いやすくカスタマイズしたもので、もともとの民事再生手続きよりも整理できる借金の金額が制限されています。

給与所得者等再生が対応している借金額は5000万円まで。

借金額が5000万円以上ある人は通常の民事再生手続きをするか、自己破産をするかになります。

条件その②安定した収入が今後も保たれる見込みがあること

ふたつめの条件は、収入そのものが安定していることです。

給与所得者等再生を申し立てして再生計画が認可されると、あなたは3年から5年かけて毎月一定額を弁済していくことになります。

一昨年は半年くらい働いていたぶんの収入があった、去年は就職して1年間収入があった、けど今年は仕事をやめて収入がない、なんてことになると、安定して毎月返済費用を捻出できるとはいえませんよね。

返済がとまってしまう可能性が高い人をはじくために、収入そのものが安定している必要があるのです。

ちなみに、「給与所得者等」再生なので、給与所得をもらっている人、つまり基本的にサラリーマンでないと手続きを利用できません。

パート、アルバイト、フリーター、歩合給で働いている人も利用可能ですが、いわゆる正社員のサラリーマンにくらべると職の安定性がないので、利用しづらいです。

条件その③返済不可能だという証明をすること

個人再生手続きは、そもそも「どうやっても返済不可能だから」利用できる制度です。

いまの収入や借金の残額、過払い金のチェックや利息の引きなおし計算までやって、それでも返済不可能だから手続きしたい、という証明をしなければなりません。

手続き上、あなたの給与明細や資産の一覧、月々の生活費が一発でわかる普段使いの銀行口座明細など、数字で判断できる書類が必要です。

条件その④収入の見込みだけではなく、金額も安定していること

給与所得等再生が小規模個人再生ともっとも違う条件が、「年収の変動がすくないこと」です。

小規模個人再生は、年収が多くてもすくなくても収入そのものが安定していれば手続きを利用することができます。

一方の給与所得等再生では、「過去2年の年収が、20%以上変動していたらアウト」です。

「これまで安定した年収を得ている人は、将来も安定しておなじくらいの収入を得る見込みがある」と考えられるからですね。

月によって残業代や手当などもあるので、収入の安定性は月収ではなく年収で考えます。

例えば、

  • 去年の年収は420万円、今年は350万円だったAさん
  • 去年の年収は420万円、今年は300万円だったBさん

を比較してみると、Aさんの年収はおよそ17%、Bさんの年収は29%変動しています。

20%以上お給料が変動しているBさんは、給与所得者等再生を利用することができません。

ただ、収入が20%以上変動していても「転職、再就職」が理由なら例外的に手続きできます。そういう場合は弁護士に相談しましょう。

条件その⑤過去7年のあいだに、給与所得者等再生の認可を得ていないこと

最後の条件は、「過去7年のあいだに、あなたが給与所得者等再生の再生計画の認可や、免責を受けていないこと」です。

給与所得者等再生のルール上、給与所得者等再生の申し立てをして再生計画の認可を受けてから、自己破産をしてから、ハードシップ免責を利用してから7年は、給与所得者等再生の申し立てをすることができません。

利用条件をすべてクリアしてるかどうか、チェックしよう!

給与所得者等再生手続きを行うためには、今回紹介した5つの条件すべてをクリアしていなければなりません。

手続きを利用するしないはさておいて、「利用できるかどうか自分でわかっている」と債務整理の選択肢も増やせます。

小規模個人再生をする人も、給与所得者等再生の利用上条件をチェックしてみましょう。