あなたが給与所得者等再生を利用したら、いくら支払うことになるのか
収入のうち、何%を借金の返済にまわせますか?
個人再生の利用者の90%以上をしめる「小規模個人再生」手続きをすると、あなたがいくら支払うことになるのか、というのは「個人再生の最低弁済基準額って?いくら支払うことになるの?」や「小規模個人再生の大事なルール「清算価値保障の原則」について」で説明したとおりです。
では、あなたが「給与所得者等再生をしたい!」と思ったときは、いくら払えばいいのでしょうか。
これまでの記事のなかで、「小規模個人再生よりも給与所得者等再生のほうが支払額が高いから人気がない」といったことを紹介していますが、具体的にいくら払うのか、どういうふうに支払額を決めるのか、は手付かずでしたよね。
今回は、給与所得者等再生の弁済額の決め方を説明していきます。
給与所得者等再生における支払額のルールとは
給与所得者等再生は、小規模個人再生をさらにカスタマイズした手続きです。
そのため利用条件だけではなく、支払額のルールについても「小規模個人再生の条件プラスアルファ」になっています。
おさらいするために抑えておくと、小規模個人再生における弁済額は、
- 清算価値以上の支払いを債権者にすること(清算価値保証の原則)
- 民事再生法に定めのある最低弁済基準額を支払うこと
で決まりましたよね。
給与所得者等再生では、2つの条件にくわえて、
③最低弁済額と「可処分所得の2年ぶん」のどちらか多いほうを支払うこと
がつけたされます。
条件そのものは簡単で、給与所得者等再生ではつねに、
- 清算価値<最低弁済基準額
- 最低弁済基準額と可処分所得2年ぶんの大きいほう
でなければならない、というだけです。
つまり、可処分所得というやつが大きければ大きいほど、あなたが支払う弁済額は高額になってしまうということですね。
「可処分所得ってなに?」といった疑問があると思いますので、3つめのルールについて補足していきましょう。
「可処分所得」ってなんのこと?どうやって求めたらいいの?
可処分所得、といわれると意味がわかりづらいですが、「あなたのお給料のうち、自由に使うことのできる金額」といいかえてみるとどうでしょうか。
お給料をもらっても、全額をまるまる遊びや趣味に費やすのは難しいですよね。
お給料をもらう時点で保険料や年金、各種税金を天引きされていますし、手取りのなかから家賃や電気料金、水道光熱費、食費などを払わないと生きていけないからです。
毎月手取りで20万円もらっているからといって、毎月20万円の弁済をすることになったら確実に破産してしまいます。
そのため、「お給料のうち、生活に必要な最低限のお金を差し引いて、自由にできる金額を基準に弁済額を考えよう」というのが給与所得者等再生の支払いのルールになっています。
生活費などをのぞいて自由に使えるお金のことを「可処分所得」といい、可処分所得の計算方法は、
- 額面上の収入額-税金-社会保険料-最低生活費
で求めます。
これもさらにくわしく見てみましょう。
法律や政令を検索してみよう!最低生活費の求め方
税金や社会保険料は、あなたの収入によって金額が決まります。
源泉徴収票や税金の支払い通知、給与明細、課税証明書などを用意すれば、すぐに金額がわかります。
問題は「最低生活費ってなに?」ということですよね。
最低生活費とは「最低限の生活を送るために必要な費用」のことで、じつは民事再生法と法律を補足する政令(民事再生法第241条の第3項の額を定める政令)で金額が決まっています。
具体的には、
- 個人生活費
- 世帯別生活費
- 冬季特別生活費
- 住居費
- 勤労必要経費
の5種類の費用があって、「あなたが住んでいるところ」「年齢」「独身なのか結婚しているのか」などの条件ごとに表を見ていくだけで、「最低生活費がいくらか」簡単に調べられるのです。
家賃など実際の支払額と政令の基準額に差がある場合は、家賃の額を証明する書類を別途提出して、「最低生活費がいくらなので、可処分所得が○○万円ですね」という計算を弁護士や裁判所にしてもらいます。
具体的にいくら支払うことになるのか
例えばあなたが、
- 東京都八王子市在住の35歳独身
- 税金と社会保険料をのぞいた手取りの年収が380万円
- 借金総額が600万円
で給与所得者等再生をする場合を考えてみましょう。
「民事再生法第241条の第3項の額を定める政令」の別表を見ると、あなたの年間の生活費は「223万9000円」です。
「可処分所得の2年ぶん」を計算すると、
- (380万円-223万9000円)×2年=312万2000円
借金額が500万円以上1500万円未満の場合、最低弁済基準額は「借金の5ぶんの1」なので、
- 600万円×20%=120万円
可処分所得の2年ぶんのほうが、最低弁済基準額よりも200万円近く高くなってしまいました。
小規模個人再生だったら120万円で良かったところ、給与所得者等再生だと300万円ちょっと支払わなければならない。
これが、給与所得者等再生の支払額のルールなのです。
いかに金額が違うか、よくわかりますよね。