「自己破産をすれば、借金がチャラになる」のはどうして?
「自己破産の手続きをすれば、借金がチャラになる」
というのが、いわゆる自己破産に対する一般的なイメージです。
民事再生や任意整理などの債務整理手続きに比べて、自己破産はたくさんの人に名前を知られています。
ただ、自己破産は制度として簡単なものではなく、利用する人もある程度限られていることもあって、じつは借金がチャラになるというのは正確な表現とはいえないのです。
「債務整理の最終手段「自己破産」は借金で困っているにとっての助け舟にも」ですこし説明したように、実際の自己破産(破産の申し立て)は、「破産」の認定をしてもらう「破産手続き」と「免責」の許可を得る「免責手続き」にわかれています。
「自己破産をすれば借金はチャラになる」とは、おもに「免責」のことを指しています。
今回は、自己破産という制度を誤解せず利用するために抑えておきたい、「免責について」の説明をしていきます。
「免責」ってつまりどういうこと?
免責をひとことでいうと、「借金がチャラになること」なのですが、こまかくいうともうちょっと意味が難しくなります。
免責とは、「あなたがもっている、借金を返さなければならないという義務の免除」であり、「債権者があなたの財産を差し押さえる権利の停止」なのです。
借りたお金は返さなければならない!
一般的に考えて、借りたお金は返さなければなりませんよね。
あなたがお金を借りるときは、「借りたお金を利息をつけて債権者に返す契約」を取り交わしています。
お金の貸し借りをするときにきちんと契約をしているからこそ、あなたは「元金+利息の返済義務」を負っているわけです。
契約にしたがってきちんと返済ができていれば、デメリットは一切ありません。
ただ、なんらかの事情があってあなたが借金の返済をできない場合、返済義務の不履行にもとづいて債権者はあなたからお金や財産を取り立てることができるのです。
返済されない場合、債権者はあなたの財産を差し押さえることができる!
義務と対になっているのが権利です。
あなたが借金の返済義務を負うと同時に、お金を貸した債権者は、「あなたの返済がとどこおったとき、義務の不履行を理由にあなたの財産を差し押さえる権利」を手にいれます。
わかりやすくいうと、あなたが借金の返済をしていなければ、債権者は裁判所を通して「あなたがもらえるはずのお給料を差し押さえて、そこから直接借金を回収」できるわけです。
ちなみに、債権者が直接あなたの家に乗り込んで金目のものを回収することができないのは、「自力救済の禁止」というものが法律で定められているからです。
これは、たとえ迷惑をかけられていようとなんだろうと、他人の権利を侵害したい、受けた被害を取り返したい(この場合はお給料を差し押さえたい)ときは、きちんと権利をもった警察なり裁判所なりにいって手続きをして、司法の力で取り返してくださいね、というルールです。
あなたがもっている「お給料をもらう権利」や「財産の所有権」を取りあげられるのは裁判所だけなので、債権者も裁判所にいって手続きをするわけですね。
免責許可がでた場合、「財産の差し押さえ」ができなくなる!
自己破産の申し立てをしてあなたが免責許可を得た場合、「借金の返済義務が免除」されます。
返済義務が免除されるので、債権者は「義務の不履行を理由に、裁判所にあなたのお給料の差し押さえをしてもらう権利を失ってしまう」わけです。
ちょっと面倒ですが、「自己破産すると借金がチャラになる」の背景には、こういった手続きや権利のながれがあるのです。
自己破産の最終目標は、「免責」を勝ちとることだった!
自己破産をする最終目標は、「免責許可を得る」ことです。
自己破産の手続きを申し立てて裁判所に破産だと認められても、免責許可が得られなければ返済義務は免除されません。つまり借金を整理できないわけです。
なので、自己破産では「免責許可が得られるかどうか」を考えて手続きの準備をしなければなりません。
免責された借金は、消えてなくなるわけではない
自己破産の申し立てをして免責を得たら、あなたは借金の返済義務から解放されます。
債権者は、お給料の差し押さえなどで強制的にあなたの借金を回収することができなくなります。
ただひとつ覚えておいてほしいのが、「借金を返さなくて良くなったとしても、借金そのものが消えてなくなるわけではない」ということです。
免責はあくまでも返済義務が免除されているだけで、借金をした事実が消えるわけではありません。
例えば、自己破産をしてもお世話になった人や家族からの借金だけは返済したい、なんて場合は、借金そのものは残っているのであとであなたが個人的に借金を返していくことも可能です。
もし、借金の事実そのものがなくなっていれば、あなたが免責後に返したお金はただの「贈与」になってしまい、相手に税金がかかってしまいます。
免責を得たあとに返済するかどうかはあなたの自由ですが、人間関係を大切にするため、義理をとおすために免責後の返済をすることもできる、と覚えておくといいでしょう。