面倒でもおぼえておきたい、「破産管財手続き」とは

「自己破産申し立て後の手順|同時廃止手続きと管財手続きの違い」では、2種類ある自己破産の手続きのうち、同時廃止手続きのほうにしぼって話をしました。

今回は、管財手続き、より正確にいうなら「破産管財手続き」とはいったいどういうものなのか、どんな場合に利用することになるのかというお話をしていきます。

自己破産の免責を審議するのは裁判所!そのサポートをするのが「破産管財人」

自己破産って、毎年何件くらい申し立てが行われていると思いますか?

100件ということはないでしょう。1000件でしょうか、それとも1万件くらい?

全国の裁判所のデータをまとめた統計資料の「司法統計」によると、平成26年の1年間、「法人ではなく、個人的に破産の申し立てをした人」の数は「6万5393人」となっています。

ピークのときは年間で24万件もの申し立てがあったので、だいぶへってはいるものの、それでも相当な数ですよね。

破産法では、「自己破産の申し立てを受けた、全国各地の地方裁判所」があなたの資産状況や返済能力などを調べ、「免責」を与えるかどうかを判断するようにしなさいというルールが決められています。

借金を返済できるだけのお金をもっているのに、こっそり自己破産しようなんて人に免責を与えてしまっては大変なので、裁判所が行う調査はとても厳しいです。

ただ、年間数万件もある自己破産のすべてを裁判所がこまかく調査していたら、ほかの裁判や手続きができなくなってしまう。

そこで、忙しすぎる裁判所にかわってあなたの「財産」を調べられる存在として、「破産管財人」を任命するのです。

裁判所に選ばれた破産管財人が、裁判所のかわりにあなたのことを調査する。

これが「破産管財手続き」なのですね。

「破産管財人」はどんなことをするのか

破産管財人は、あなたがどういう理由で自己破産をしたいのか、本当に返済できないのか、隠し口座や隠し財産をもっていないか、といったことをチェックします。

同時に、自己破産をしたあなたから差し押さえた財産資産を、きちんと債権者に配当するための存在でもあります。

役割としては、個人再生についての記事で紹介した「個人再生委員」と似たような役割をもっているわけです。

あなたあての郵便物をチェックしたり、債権者と話しあって借金の額などを確認したり、どうして返済できなくなってしまったのか、なぜお金を借りたのかといった理由をあなたから聞きだしたり、といろいろな調査を行います。

ちなみに、管財人は免責の可否を判断する役割ももっているので、隠し口座をもっていたり、嘘をついていたりすることがわかれば、そこで申し立ては終了です。

あなたはどれにあてはまる?「破産管財手続き」になるパターン5つ

「同時廃止手続きともう一つの管財手続きへの分岐ポイントとは」では、「売れば20万円以上になる資産」か「99万円以上の現金」があれば、同時廃止手続きではなく「破産管財手続き」をすることになる、と説明しました。

ただ、破産管財手続きが実行されるパターンは、もうすこしこまかく分類することができるのです。

ざっくりと、「どういう場合に破産管財手続きをすることになるのか」をチェックしてみましょう。

①借金の理由に問題がある

自己破産には、「免責不許可事由」といって「ギャンブルなど、あまりよろしくない理由で借金をかさねた人は自己破産できませんよ」というルールがあります。

あなたが借金をした理由にあやしいところがある、もしくは、免責不許可事由にあたる可能性があるんじゃないの? と裁判所が判断した場合、破産管財手続きが行われます。

②一定額以上の資産をもっている

自己破産の申し立てをするときは、もっている財産などを書類にまとめて裁判所に提出しなければなりません。

「20万円以上の資産」「99万円以上の現金」などがある場合、破産管財手続きを行います。

一定額以上の資産があれば、換金して債権者に配分するのも管財人の仕事です。

③特定の債権者をひいきして返済している

債務整理では、偏頗(へんぱ)弁済といって、「特定の債権者をひいきしてお金を返す」ことを禁止しています。

これまでの返済状況や債権者とのやり取りなどから偏頗弁済の可能性がある場合、破産管財手続きを行い、最終的にすべての債権者に公平に分配できるよう管財人が調整します。

④これまでに払った過払い金がある

ちょっと話はかわりますが、自己破産をするときに「過去、債権者に支払った過払い金があって、それを取りもどしたい」場合は、過払い金の回収も管財人に頼みます。

⑤そのほか、裁判所が調べたほうがいいと判断した場合

高額な不動産をもっている、あまりにも借金が多いなど、4つのパターンにあてはまらなくても、裁判所がくわしく調査したほうがいいと思えば破産管財手続きは行われます。

弁護士をたてて手続きをしよう!

破産管財手続きが必要な場合、自己破産をするときは弁護士にお願いをしましょう。

弁護士をたてずに自分で破産管財手続きを受けると余計にお金がかかるうえ、手続きも難しくなってしまうからです。