債務整理にそなえて、「借金の歴史」をあきらかにしよう!
「債務整理」を正しくやって借金を片付けるためには、それなりの準備や知識が必要です。
ここまでの記事で「借金総額の把握」「借金の種類についての知識」を知った人はもう気がついているかもしれませんが、債務整理をするためには、じつはもうひとつ「確認しておかなければならないもの」があるのです。
ずばり、「過払い金」があるかどうか。
任意整理でも民事再生でも、そして自己破産をするにしても、過払い金があるかどうかで借金をいくら減らせるかが決まる、といっても過言ではありません。
「自分に過払い金があるかどうか」を判断するためには、「どこから借金をしたか」「いくら借りたか」「どんなふうに返済してきたか」といった「あなたの借金の歴史」をひもとく必要があります。
そこで今回は、債務整理の手続きを進めるために必要な、「取引履歴の開示請求」についてお伝えします。
「過払い金の有無」を調べるために必要な「借金のデータ」を集める方法
過払い金は、利息制限法と出資法の上限金利の差があるので生まれます。
その差額を正確に計算するために、「利息の引きなおし計算」をするわけです。
利息の引きなおし計算では、「最初にお金を借りたときまでさかのぼって、利息制限法の利率で利息を計算しなおす」ので、
- あなたがお金を借りた日付
- 借り入れ金額
- 借金をしてから完済するまで(返済途中ならいままで)いくら返済してきたのか
がわからないと計算になりません。
ところが、「取引履歴」「借金の歴史」を客観的に証明するのは大変です。
借金をどこから、いつ、いくら借りて何回にわけて返済したのかを正確に覚えている人なんて、そうそういませんよね。
証拠がなければ、債務整理の手続きをしても「そんな借金本当にあったの?」といわれておしまいです。
とにかく、「借金や返済の事実」を証明できるものがないと、話にならないのです。
家中ひっくりかえして、「借金の証拠」になる書類を探そう
借金の事実や金額を証明する証拠として確実なのが、「借金を申し込んだときの契約書」や「返済をしたときに利用したATMなどの明細書」といった書類です。
返済中にとどいた明細などでも構わないので、とにかく家中をひっくり返して集められるだけの書類を集めましょう。
記憶を頼りに「取引履歴の開示請求」をしよう
ただ、1、2年まえのものならともかく、5年前、10年前の借金の記録となると手元にないことのほうが多いですよね。
とくに借金を完済している場合、契約書や明細は「もう使わないもの、終わったもの」として捨ててしまっている可能性が高いです。
家族や知り合いに借金がばれないよう、こっそり捨てていた……なんて人もいるでしょう。
そんなときは、「どこの会社から、いつお金を借りたのか」というあなたの記憶を頼りに、「取引履歴の開示請求」を行います。
債権者に対して、「これまでにあなたのところから借りた借金と返済の記録、全部ちょうだい!」というわけです。
請求は個人でもできますし、履歴の開示は貸金業法でも義務化されているので、たいていは請求すればすぐにデータが届きます。
ただ、取引履歴が手に入らない場合もあるので要注意。
請求がひと筋縄ではいかないこともあるので、トラブルを避けるなら弁護士や司法書士にお願いするのがおすすめです。
10年以上まえの取引履歴は、なかなかだしてもらえない
法律では取引履歴の開示は義務ですが、残念なことに世の中にあるすべての債権者が良い業者とは限りません。
「もうデータがない」「そんなことは知らん」なんて具合に書類が手に入らないこともあるのです。
とくに、10年20年以上まえの借金だと、なかなかデータをだしてくれません。
貸金業法の改正で多くの消費者金融が倒産していますから、「お金を借りていた会社が倒産して、権利だけべつの会社が引きとっている」なんて場合もあります。
「もとの債権者から借金そのものは引き受けたけど、細かいデータなんてもらってない」といわれたら……やっかいですよね。
もちろん、そんなときの対処法もあります。
どうしても取引履歴を開示してくれないときの対処法
くりかえしますが、「取引履歴の開示」は債権者にとって法律上の義務になっています。
つまり、わざと取引履歴をださない、データの開示を拒否することは、貸金業法違反なのです。
そんなときは、金融庁など金融業を管理する行政や、各都道府県にある業界団体に通報しましょう。
貸金業をするためには行政の許可が必要ですから、行政や業界団体から指導されたり、行政処分で営業停止になったりするのはどこの業者も困るのです。
ただ、そこまでしても拒否する業者は拒否します。
最終的に裁判をする方法もありますが、たちの悪い業者と交渉をしても時間とお金をむだにするだけ。
結局は最初からトラブルにならないように、目を皿のようにしてでも契約書や明細書を探すのが一番です。
借金をしたのは何年の何月何日なのか。
たったひとつの事実を証明するのが、「債務整理」の具体的な手続きのはじまりです。