「借金の理由」によっては債務整理できなくなる!?
「絶対返せない金額の借金をバンバンして、自己破産しちゃえば大もうけできるんじゃないの?」
借金に悩んでいる人もそうでない人も、一度くらいこんなことを考えたことがあるのでは。
たしかに、理論上はそのとおりです。
自己破産に成功すると、最終的に裁判所から「お金を貸した人たちが、あなたに借金の返済を請求できなくなる」のです。これを免責といいます。
手続きの結果免責してもらえるので、「自己破産をすると借金がゼロになる」わけですね。
ただ、世の中そんなうまい話はありません。
自己破産をふくむ債務整理は、どれも「債権者に大きく譲歩させる方法」ですから、「債権者が損をするだけの根拠や覚悟」が必要なのです。
「借金でにっちもさっちもいかなくなっている人に、再生への道をつける」のが債務整理です。
「限界まで借金して自己破産すれば、大金が手元に残る!」なんて考えの人が手続きしても意味がないので、債務整理では「どうして借金をしたのか」も大切な判断基準になっています。
というわけで今回は、「債務整理と借金の理由」についてのお話です。
自己破産では、借金をした理由も審議の対象になる
債務整理の中で一番「債権者に譲歩させる」のが自己破産です。
効果や結果が大きいので、そのぶん審査は厳しくなっています。
自己破産では裁判所に申しでて、借金額や事情を説明して「免責」をもらえるかを審査してもらうことになるので、途中で必ず「どうして借金をしたのか」「なぜ返済ができないのか」を聞かれます。
そして自己破産の法的効果を保証している「破産法」の第252条第4項では、「浪費、射幸や賭博などによって借金をした人は、自己破産できませんよ」という条件が設定されているのです。
射幸とは「投資や投機など、偶然をあてにしてもうけを出す行為」のこと。
ようするに、「株などへの投資やギャンブル、ブランド品の買いあさりや多すぎる飲食費」などを支払うために借金をした人は、自己破産できません。
債権者だって、「ちょっと銀座で豪遊しすぎちゃって、借金が返せないから自己破産します!」なんていわれたら納得できないですよね。
では、ギャンブルなどで借金した人は絶対に債務整理できないのでしょうか。
じつは「裁量免責」といって、一定の積みたてをしたり、反省を示したりすることで特別に免責してもらうという方法があります。
「うそをついたり、ごまかしたりして手続きするのはダメ!」と破産法で決まっているので、素直に事情を話して反省するのが一番なのです。
自己破産以外の方法なら借金の理由は関係ないの?
債務整理は自己破産以外にもあります。
具体的には、任意整理、民事再生、特定調停です。
これらの手続きでも「借金の理由」は聞かれるのでしょうか。
基本的に、「どんな手続でも借金の理由は重要だし、質問される」と思っておきましょう。
「任意整理」の場合
任意整理の多くは、「弁護士や司法書士にお願いをして、債権者である会社と借金を減らせないか交渉してもらう」という方法で手続きを進めます。
任意整理をしたあと現実的にやっていける返済計画が必要なので、依頼を受ける専門家は「あなたが、整理された借金をきちんと返済していける」ことを確認してから交渉に望まなければなりません。
「返せるかわからないし、返すつもりもないけどとりあえず債務整理したい」という人の代理になるのは、弁護士だっていやです。
なので、債務整理しても生活が改善しない可能性が高い人、例えばギャンブルやアルコール依存症だったり、浪費癖があったり、仕事のやる気がなかったりする人は依頼を断られることもあります。
「民事再生」の場合
民事再生では、手続きとして「裁判所」に頼ります。
裁判所で行う手続きや申し立ては、とにかく事実の証明、客観的な証拠が重要になりますから、「どうして借金をして、返済ができなくなったのか」という事情も報告しなければなりません。
「特定調停」の場合
特定調停でも裁判所を頼ります。
あなたと債権者が交渉をするときの仲介役をお願いするので、「そもそもどうして借金したんですか?」と裁判所から聞かれることも少なくないのです。
事情がわからないと判断のしようもないですからね。
「借金の理由が重視」されるのは、更正が可能かどうかを判断しやすいから
債務整理の多くで借金の理由を質問されるのは、「借金の理由を聞けば、ある程度この人が更正できるかどうかを判別できるから」です。
とくに、アルコールやギャンブルなどの依存症になっている人は、債務整理をするまえに依存症を改善しないと、また同じように借金を重ねてしまいます。
ようするに、「本当に更正できるのか」が重要なわけです。
逆にいえば、自己破産に「裁量免責」があるように、きちんと更正できることを示すことができれば、ギャンブルなどの事情で借金をした人でも債務整理をして人生をやりなおせます。
借金の理由を他人に話すのは苦しいことですし、つい隠してしまいたくなる気持ちもありますが、それでも事情を話して更正への道を歩むのが、債務整理への近道なのです。