借金の返済は「ひいき」しちゃダメ!?厳しい返済のルールとは

債務整理をする、もしくはなにかあったときのために債務整理について知っておきたい。

そう考えている人でも、思わぬ勘違いから手続きを失敗してしまう、なんてことが結構あります。

とくに、「自分ひとりでなんとか債務整理をしよう!」と思っている人は要注意。

本当にちょっとしたことですが、債務整理の手続きでは「いかにミスがないか」がなにより重要です。

債務整理について調べていると、ついつい債務整理のメリットや注意点ばかり気にしてしまいがち。

ですが、債務整理をするなら「債権者の権利も考えておく必要がある」のです。

債務整理の知識には、「債権者の権利を守るためのルール」もあります。

借金の返済を「ひいき」する人は、債務整理できなくなってしまうのです。

今回は、「返済のひいきを認めないルール」である「偏頗弁済」と「債権者平等の原則」についてふれていきましょう。

債務整理をするときは、「偏頗弁済」をしてはいけない

債務整理、とくにあなたが自己破産をするときは、「偏頗弁済」をしないように注意しなければなりません。

偏頗弁済ってなに?

偏頗弁済(へんぱべんさい)、難しいことばですが、意味は「特定の債権者にのみお金を返済する」こと。

自己破産をするとき、あなたがもっている高額な財産はすべて処分されてしまいます。

自己破産については「自己破産とは」を見てもらうとして、取り上げられた財産は競売にかけられ、「あなたにお金を貸していた債権者たちで、売却額をわける」ことになります。

たとえば、あなたの借金は500万円ありました。

A社から250万円、B社から150万円、C社から100万円借りている場合、あなたの財産を処分した売上は「借金の50%をもつA社が、売上の50%をもらう」「借金の30%をもつB社が売上の30%を」「借金の20%をもつC社が売上の20%を」といったふうに借金額の割合に応じて平等にわけるのです。

ここでもし、あなたが「良くしてもらったC社にだけ、こっそり返済するよ」といったことをすると、C社だけ返済でひいきされるわけですよね。

こういった不平等な行為を「偏頗弁済」と呼び、「借金の返済をするうえでしてはいけないこと」とされているのです。

偏頗弁済をしようとする人、した人は自己破産できないので要注意!

だれかをひいきするということは、べつの債権者の権利を侵害して損をさせるということです。

「いったいなにがいけないの?」と思うかもしれませんが、偏頗弁済はじつは自己破産の「免責不許可事由」にふくまれています。

わかりやすくいうと、偏頗弁済をする人は「ギャンブルや投資が原因で借金した人」とおなじように、自己破産できないのです。

債権者には平等に!債務整理するなら知っておくべき「債権者平等の原則」って?

債権者だってきちんとした手続きをしてあなたにお金を貸しているので、「お世話になったべつの会社にだけ返済するから、ちょっと返済を我慢して!」なんてことをされると困ります。

ただ、実際には消費者金融から借りているお金より、家族や親戚、友人から借りているお金の返済を優先してしまう、なんてことも十分ありえるわけです。

そこで、個人的な事情で返済をひいきできないよう、「債権者平等の原則」というものがつくられています。

さきほどの偏頗弁済でも紹介した、「貸している借金の割合に応じて、返済する額も平等にしましょうね」という返済の基本ルールです。

任意整理をするときは、「借金の残りを一括払い」することができる

債権者平等の原則が深く関わってくるのは、おもにあなたが「任意整理」をする場合。

任意整理をして借金を減らしたあとの残額は、3年をめどに毎月返済していくことになります。

ですが、じつはここで「100%分割で返済するか」「70%から90%くらいの金額にまけてもらうかわりに、一括で返済するか」を債権者と交渉することができるのです。

家族や知り合いからお金を借りて工面できる、なんて人にとっては一気に借金をなくすことのできるとても効果的な手段ですね。

ただ、気をつけたいのは「一括弁済をする場合も、債権者平等の原則を守らなければならない」ということです。

借金の「一括弁済」でもひいきはダメ!

債権者が複数いる場合、それぞれ借金額は違いますよね。

偏頗弁済で使ったABC社の例で考えてみましょう。

「借金が500万円あって、一括弁済のためになんとか400万円用意できた」という場合。

用意したお金が借金総額の80%なので、返済も「ABC社の借金額にあわせて、80%ずつおなじ割合で」行わなければなりません。

具体的には、「A社には、借金250万円の80%である200万円を返済」といった計算をして返済するのです。

個人的に返済をするならともかく、債務整理をして債権者に譲歩してもらうなかで「返済額や返済の順番をひいきする」のはとても不誠実な行為ですから、債権者にはきらわれます。

不平等なことをすると債務整理そのものが失敗してしまうので、「偏頗弁済」「債権者平等の原則」もしっかり守るべきなのです。