自己破産の手続き中は、特定の仕事ができなくなる!
あなたは、「職業上の欠格事由」や「職業制限」ということばを聞いたことがありますか?
じつは、債務整理の最終手段である自己破産をするとき、手続きをしているあいだは「特定の職業につくことができない」というルールがあるのです。
職業の欠格事由や職業制限なんてふうに呼ぶのですが、もしあなたが「職業制限」について知らずに自己破産の手続きを進めてしまうと、「仕事を辞める」ことになったり「仕事をかえる」ことになったりする可能性があります。
自己破産をしたあとも生活はつづきます。
仕事をしてお給料を稼がないと、来月、再来月、そしてもちろん自己破産の手続き中だって生活することはできません。
一般的なサラリーマンの人にはあまり関係のない話ですが、会社の役員やいわゆる士業の人、保険の外交員や警備員の人ならぜひ知っておいてほしいのが、「職業制限」なのです。
今回は、ちょっとこまかい職業制限の話を紹介していきます。
破産による「職業の欠格事由」とは
自己破産の手続きは、
- 破産の申し立てをする
- 申し立てが認められて破産者(借金が返せないと裁判所も認める状態)になる
- 破産の手続きが正式にはじまる
- 面談などをして、許可が出れば裁判所から「免責」がでる
という流れで進んでいきます。
このなかで、「正式に破産の手続きをはじめてから、免責がでるまで」の期間、一定の職業にはつけませんよと、いうのが職業制限です。
専門用語でいうと、「破産手続きを開始してから、復権するまで(免責を手に入れて破産者でなくなるまで)」職業が制限されます。
免責を手に入れて復権したら職業制限は解除されるのですが、自己破産の手続きは全部で半年くらいはかかります。そのあいだ仕事ができないと、大変ですよね。
ちなみに、どうして職業制限が自己破産にだけあるのかというと、「それぞれの職業で守るべき法律で、破産手続きが欠格事由になっているから」です。
例えば、弁護士。
弁護士が守るべき基本的なルールである「弁護士法」の第7条第5項では、「破産手続きをして復権しない人」は弁護士たる資格がない、と決められています。
というわけで、「自分の職業が職業制限の対象になるかどうか」をみるために、一部ではありますが「破産手続きが欠格事由になる職業」をまとめてみました。
もしあなたがこの職業なら気をつけよう!欠格事由のある職業まとめ
ざっと箇条書きで紹介してみます。
いわゆる士業全般
- 弁護士
- 公認会計士
- 税理士
- 行政書士
- 司法書士
- 弁理士
- 土地家屋調査士
- 不動産鑑定士
- 社会保険労務士
- 中小企業診断士
また、司法試験を突破して研修中の「司法修習生」も職業制限の対象です。
そのほかの職業や役員
- 人事院の人事官
- 教育委員会委員
- 商工会議所会員
- 商工会の役員
- 商品取引所会員、役員
- 証券外交員
- 商品投資販売業、顧問業
- 金融商品取引業
- 証券金融会社の役員
- 生命保険募集人及び損害保険代理店とその役員
- 貸金業者
- 質屋
- 風俗営業を経営する人
- 旅行業者
- 警備員
- 卸売業者
- 調教師、騎手
- 特定非営利活動法人の役員(NPO)
- 一般建設業、特定建設業
- 建築士事務所開設者
- 宅地建物取引業
- 宅地建物取引主任者
- 不動産鑑定業者
- 通関業者、役員
- 鉄道事業者、役員
- 索道事業者、役員
などなど。
競馬のジョッキーやNPO法人など、かなり変わった職業でも破産が欠格事由になっていますね。
仕事をするうえで特殊な資格が必要なもの、なんらかの委員会に登録している人、役員などは職業制限の対象である可能性が高いです。
職業制限の対象にならない職業も!
ここまで紹介してきた「職業制限」ですが、一般的な企業のサラリーマンや会社の経営者、医師や看護士、政治家、一部を除いた公務員などは職業制限の対象になっていません。
つまり、特定の職業以外の人は、「自己破産をしたことで仕事がなくなる・会社にばれる」といったデメリットはないのです。
ちなみに、旧商法の規定では会社の取締役も職業制限の対象でしたが、平成18年の法改正で対象外となっています。
ただし、会社役員や取締役の人はちょっと注意が必要です。
会社の役員や取締役の人は要注意!
じつは、会社法の規定に「破産手続きの決定が退職事由になる」というものがあります。
つまり、取締役や役員はなにもしないでいると、「仕事をしてはいけないわけじゃないけど、一度退職して、そのあとまた復帰する」ことになるのです。
これを防ぐためには、株主総会を開いてすぐにまた取締役になる、有限会社なら社内のルールを調整しておく、といった対策が必要です。
見落としがち!?破産手続き中は民法の規定上「できないこと」もある!
民法の規定にも「破産手続きをした人はこれができません」というものがあります。
こまかいことをいうと取締役が一度解任されるのも民法上のルールなのですが、例えば、他人の代理人や後見人、遺言執行者などにはなることができません。
破産手続きは人によって制限が違うので、事前に「なにか引っかかるものがないか」を確認してから手続きするのがおすすめです。