ヤミ金の取りたてはそもそも違法

「おまえが困っているから借りたんだろう! だから金を貸してやったのに、返せないなんて話があるか!」

「借りたもんは、きちんと返せ!」

ヤミ金がよく使いそうなセリフですね。

「そもそも自分で金利にも条件にも納得してお金を借りたはず。こちらは強制なんてしていない。返さないおまえが悪いのだから、取りたてを受けるほうが悪い」ヤミ金には、こういった論理があるわけです。

ですが、本当にそうなのでしょうか。

なかにはおどされすかされ、仕方がなくヤミ金から借りてしまったという人もいるでしょう。

契約書をみたらまったく知らない高金利になっていた、元金にゼロがひとつ足してあった、そもそも完済不可能な金利になっていたことからはじまるヤミ金の取りたては、法的に問題がないのでしょうか。

じつは、ヤミ金の取りたては基本的に違法です。

取りたてについては法律でルールがつくられていて、ヤミ金が行うような強引な取りたてはすべて法律で禁止されているのです。

さきほどふれた「ヤミ金の論理」は、あくまでも「あなたの罪悪感をあおり、あなたが返済するしかない、と思うようにするためのおどし」です。

ヤミ金の論理にながされないように、いっしょに「取りたての違法性」を確認しましょう。

「法律を守らない契約」は無効になる

わたしたちは、普段から無意識のうちにたくさんの「契約」を行っています。

契約というと「難しい規約を読んで、署名と捺印をするもの」だと思いがちですが、たとえばそこらへんのお店に飛び込んで行う、「カレーライスくださいな」「はいおまちどう!」というやり取りも、立派な契約行為です。

「カレーという商品がほしい」「そのかわりに対価(お金)を支払う」という契約ですね。

そんな契約にもいろいろルールがあって、「本人が納得していないのに、無理矢理かわしたものは無効」「未成年のこどもが行ったものは無効」「違法な内容の契約は無効」にすることができます。

ヤミ金が行う貸金業は、違法行為です。

出資法の金利制限より高い過剰な金利でお金を貸すのも、貸金業としての登録を行わずに「お金を貸して利息を取る」のも貸金業法違反です。

「貸金業者とかわす借金の契約」は内容が違法なので、ヤミ金がいう無理な利息を返す必要はありませんし、手続きすれば相手を処罰することもできます。

ただ、貸金業者も自分たちが違法なことをやっている自覚があります。

なので、お金を借りた人が法的行為にでないように、自分たちのいうことを聞くように、あの手この手で「強引な取りたて」をするのです。

貸金業者の取りたてにも、法律上のルールがある

貸金業法では、「取りたてに関するルール」も決めています。

法律で規制しないと、「とことん相手を追いつめてでも返済してもらう」なんてことがまかりとおってしまいますからね。

ちょっとみてみましょう。

  • 取りたては朝の9時から夜の8時まで。それ以外の時間はNG
  • 勤務先など、自宅以外のところにいって取りたてをしてはならない
  • 自宅に取りたてにきて、「帰って」といわれても帰らないのはNG
  • 借金のことをみだりに他人にあかしてはいけない(まわりの住民に聞こえるように、大声で金を返せと叫ぶ、ビラをはる、看板をたてるなど)
  • 「金がないなら、ほかから借りてでももってこい!」もNG
  • お金を借りた本人以外(家族や親戚、友人など)に取りたてをしてはならない
  • お金を借りた人が債務整理をして、弁護士などから「取りたてをやめるように」といわれたらすぐに取りたてをやめなければならない

などなど。

ちなみに、法律上の「取りたて」には、直接訪問以外に電話、FAXを送ることも含まれます。

お金を借りた人をこわがらせて、私生活や仕事に悪影響をおよぼすことのないように法律で規制しているのです。

「違法な取りたて」だったとしても、危険なことにかわりはない

違法な内容で貸したお金とその利息を「返せ!」というのは「恐喝罪」です。

たとえ借金があったとしても、相手をこわがらせることをいったり行動にうつしたりすれば「脅迫罪」です。

ヤミ金そのものが違法行為ですし、違法な契約は無効ですからヤミ金から借りたお金を返す必要も、本来はありません。

ただ、「相手が法律を守っていないから」といって、あなたが絶対的に正しく、あなたの身の安全が保証されるわけではないことには注意が必要です。

たまに、「相手は違法行為をしているから」とヤミ金を相手に挑発したり、法律や警察の存在をちらつかせて自分でことをおさめてやろう、と思う人がいます。

いうまでもないことですが、ものすごく危険な行為です。

法律は法律であって、24時間あなたの身辺警護をしてくれるわけではありません。

相手はそもそも、違法なことがわかっていて激しい取りたてをしているのです。

そんな法律を意に介さない相手にひとりで戦いを挑むのは、ライオンの檻に30センチの棒きれ一本で飛び込むようなもの。

「違法だ・・・」といった瞬間に殴り倒されるなんてこと、絶対にないといえますか?

ひとりで立ち向かうのは危険です。困ったときは、警察や弁護士を頼りましょう。