裁判所に頼んで債権者と交渉できる! 債務整理の「特定調停」とは

「1週間後に特定調整をはじめられるように準備してください! さあスタート!」

なんていわれて、すぐになにをして良いか頭に思い浮かぶ人、どれくらいいるでしょうか。

債務整理の方法には、いろいろなものがあります。

「債務整理とは」でも簡単に紹介していますが、それぞれ個別の手続きであり、できることや効果、メリット・デメリットはことなるわけです。

ただ、そんな債務整理手続きのなかには、あまり知名度の高くないものもあります。

それが、今回紹介する「特定調停」なのです。

特定調停を知らずに交渉することはできない!

特定調停は、自己破産などだれもが知っている債務整理と違ってあまり広く知られていない手段です。

どういうものかというと、「裁判所に頼んであいだに入ってもらい、債権者と交渉して借金を減らす話し合いをする」という手続きです。

「任意整理とは」をさきにご覧になった人は、ここで「あれ?」と思うんじゃないでしょうか。

そうです、任意整理も「債権者と交渉して借金を減らしてもらう方法」でしたよね。

特定調停は、「借金をしているあなたが裁判所に行って申し立て」をすることで、「利息制限法の上限金利を使った利息の引きなおし計算」を行い、「払いすぎている利息ぶんを元金の返済ぶんにあててもらったり、利息をまけてもらったり」して借金を整理するやり方です。

利息の引きなおしなど、やることが任意整理と似ていることもあってあまり知られていないのかもしれません。

さて、任意整理との違いはあとに回しましょう。

特定調停の特徴は、「基本的にあなた自身が手続きや交渉、書類の準備を行う必要がある」「やり方さえわかれば、時間はかかるけどお金はあまりかからない債務整理である」ということです。

裁判所という公正で力のあるものを仲介役に立てるので、決定した借金の返済プランには法的効力も生まれます。

自分で手続きを行うことが多いぶん、任意整理に比べても借金が減るかどうかは不安定になりがち。

それでも特定調停には特定調停の良さがあります。

任意整理ではなく特定調停をしたほうが良いとき、特定調停について知らなければ、そもそも手続きはできません。

こういった手続きは、「手続きの存在や効果を知っている」ことが重要なのです。

「特定調停」と「任意整理」は似ているようでちょっと違う

特定調停と任意整理の違いは、「裁判所をとおすかどうか」のひとことにつきます。

任意整理の場合、弁護士などを代理人にして、手続きも丸投げで交渉を進められます。裁判所が関わることはありません。

弁護士をいれたとしても、あくまでもあなたと会社という個人的なやり取りになるのです。

ですが特定調停の場合、「裁判所が仲介役」ですから、公的な手続きになります。

裁判所が仲介としてあなたと金融会社のあいだに入るので、いろいろな判断をするためにしっかりした書類を準備する必要がありますし、話し合いのあとにつくる返済プランなどをまとめた書類(調停調書)もばっちり法的な効力をもちます。

あまりこみいったことを考えても仕方がないので、「特定調停は任意整理より手続きが大変で、時間もかかる」と思ってもらえばわかりやすいでしょう。

どんな人が利用できるの?

特定調停を行うと、利息の引きなおし計算をして借金の額を減らすことになります。

だれでも利用できるわけではなく、ある程度の条件があるのです。

あくまでも借金が減るかもしれないだけで、自己破産のようにゼロになるわけではないので、基本的に、

  • 収入が安定しているので、すこしずつでも返済していける
  • 3年くらいで減額してもらった借金をきちんと返済できる

のが必須です。

この条件を満たしていれば、あとはこまごまとした実務をやっていくのみ。

具体的な手続きは裁判所によっても違いがあるので、近くの裁判所にいって良く確認しておくのがおすすめです。

利用するまえにチェックしよう!「特定調停」の注意点

特定調停か任意整理か、を考えるときに気をつけたいのが、「裁判所が入っていても、特定調停は話し合いだ」ということです。

任意整理も同じですが、特定調停をしたからといって必ず借金が減るわけではありません。

もともとの借金の利息が利息制限法をこえないパーセンテージであれば、利息の引きなおしをしても借金は減りませんし、債権者が「そんな返済プランなど知るか!」といえば交渉は決裂です。

話し合いは裁判所に判断してもらうことになりますから、結果として「支払わずにすむと思っていた遅延損害金も返済することになった」「来月以降の利息も引き続き返済しなければならない」なんてことになることも。

手続きの性質上、任意整理と違って、「いろいろな書類を準備して、実際に裁判所に行って特定調停の申し立てをしたあと」でないと借金の督促や取りたてがとまらないのも注意が必要です。

使いこなすのは大変なものの、上手に使えば借金を減らすことができる。

特定調停は、いわば玄人好みの手続きなのです。