「ハードシップ免責」を利用できれば、借金の残額がゼロになる!?
「民事再生」もしくは「個人再生」という手続きに聞き覚えはありますか?
債務整理をおおまかに4つにわけると、自己破産、任意整理、特定調停、そして民事再生手続きになりましたよね。
民事再生を簡単にいうと、「マイホームをもったまま、住宅ローン以外の借金を減らせる手続き」です。
自己破産に比べて家を手放さなくて良いというメリットがあるので、債務整理のなかでもかなり注目されている制度です。
くわしいことはまたべつの記事で説明しているのでそちらで確認してもらうとして、今回は、民事再生のなかでもちょっと特殊な「ハードシップ免責」を紹介します。
あなたが民事再生を利用していて、なんらかの事情があって返済計画をつづけられなくなったとき、「ハードシップ免責」を使えば残りの借金をゼロにできるのです。
めったに利用できない制度ですが、知っていると万が一のときに役立ちます。
この機会に、ぜひ知っておきましょう。
未来のことはわからない!「ハードシップ免責」は返済計画が滞ったときの最終手段
民事再生を行うと、住宅ローン以外の借金をものすごく減らすことができます。
ただ、民事再生は自己破産と違って借金がチャラになるわけではないので、「減った借金と住宅ローンを、数年間かけてすこしずつ返済」していかなければなりません。
そのため、裁判所と協力して「返済計画」をたてることになります。
ただ、計画はあくまでも計画です。
たとえばあなたが交通事故にあったり、不治の病におかされて長期入院することになったりしたら、収入がなくなるので返済できなくなってしまいますよね。
こういう場合、民事再生では、
- 返済できそうなら返済計画の期間を最大2年延長する
- 債権者が「返済は無理だな」と裁判所に申し立てをして、あらためて借金の整理方法を考える(自己破産など)
- 「ハードシップ免責」を利用して、残りの借金をゼロにする
ことになります。
ハードシップ免責は、「借金の返済ができないのは本人のせいとはいえないし、もうほとんど返済しきっているんだから債権者も大きく損をしないし、ここから自己破産させるのはかわいそうだから特別に免責してあげよう」という裁判所の温情です。
厳しい条件をクリアすれば、残った借金をゼロにできる制度です。
ものすごく難しい!ハードシップ免責に必要な4つの利用条件とは
通常、「免責」は自己破産をしないともらえません。
ただ、
- 返済できなくなったのは、どうしようもない事情があったから
- すでに返済計画の「75%以上」を完了している
- ハードシップ免責を許可しても、債権者の「一般の利益」に反しない
- どうやっても当初の返済計画をそのままつづけることができない
という条件をクリアしている場合、特別に「ハードシップ免責」を利用できます。
本来なら自己破産をしないと手に入らない、「残りの借金をチャラにする」という大きな効果を手に入れるわけですから、利用条件はものすごく厳しいです。
それぞれ、かるく説明してみましょう。
①返済できなくなったのは、どうしようもない事情があったから
民事再生でつくった返済計画が滞った事情によっては、ハードシップ免責を利用できます。
どうしようもない事情とは、「本人のせいとはいいがたい事情」のこと。
具体的には、「事故や病気で長期間入院しなければならなくなった」「突然会社が倒産してしまい、転職活動がうまくいかない」「商売をしていたけど、地震などの天災でお店を失ってしまった」などです。
②すでに返済計画の「75%以上」を完了している
ハードシップ免責は、「当初の返済計画の4ぶんの3」つまり75%以上返済を終えている場合にのみ利用することができます。
「ほとんど返済しきっているんだから」と裁判所が温情をかけてくれるボーダーラインが、75%なのですね。
③ハードシップ免責を許可しても、債権者の「一般の利益」に反しない
「債権者の一般の利益に反しない」とは、「もし、あなたが最初から自己破産をしていた場合に、債権者が取りかえすことのできたお金」より「民事再生をしてコツコツ返済してきたお金」のほうが多い、という状態です。
ようするに、債権者が一方的に損をするわけじゃないなら、ハードシップ免責を認めても良いという条件です。
④どうやっても当初の返済計画をそのままつづけることができない
ここまですべての条件をクリアしていて、なおかつ返済計画の期間を延長しても絶対に返済は無理! という場合にのみ、ハードシップ免責を利用することができます。
住宅ローンはなくならない!
ちなみに、民事再生の返済計画を進めることができず、ハードシップ免責を利用できたとしても住宅ローンは残ります。
手続きをしても住宅ローンの返済ができない場合は、抵当権を使われて家を差し押さえされる、なんてこともありえるので要注意。
「住宅ローンが払えない」なら、自己破産など、またべつの債務整理をする必要があるということも覚えておきましょう。
ハードシップ免責は、とても繊細な制度なのです。